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入り組んだ湾や入り江が美しい英虞湾(あごわん)は、約60もの険しいリアス式の島々が点在する、特異な海洋生態系を持つ場所です。ここは19世紀に真珠養殖が誕生した地として知られ、真珠の養殖場や漁場、そして人々の暮らす集落は、人の手によって生物多様性が高まる「里海(さとうみ)」という考え方を体現しています。里海では、人間は海や陸の恵みをただ享受するだけではなく、その恩恵に与りながらも環境を豊かにし、持続可能な循環の一部として存在しているのです。
しかし近年では、水質の悪化や気候変動、都市への人口流出といったさまざまな要因により、里海の伝統的なモデルが崩れつつあります。こうした中、志摩の奥深くに佇む超プライベートなリトリート「Cova Kakuda(コバ カクダ)」は、地域の未来を支える新たな里海のあり方を模索しています。
Covaは、老舗の家族経営による「覚田真珠」グループが手がける施設で、1931年に建てられたアコヤ真珠の養殖場兼工房の跡地にあります。かつての建物を活かしながら、洗練された意匠でリノベーション・拡張し、それぞれ異なるテーマを持つ4棟のヴィラとして再生させました。ここでは、専属シェフによる食事だけでなく、文化体験やウェルネスアクティビティも含めたオールインクルーシブの滞在が楽しめます。
このリトリートでは、自然環境の保全にも力を入れており、敷地内での自家栽培、廃棄物のコンポスト化、周辺の森からの薪の再生可能な収集、湾内に流れ着く海洋ゴミのリサイクルやアップサイクルにも取り組んでいます。さらに、地域に新たな真珠養殖業者が生まれるよう支援と研修を行い、若者の都市部への流出を防ぎつつ、英虞湾の水を浄化するアコヤ貝の健全な生育にも貢献しています。
Covaは、「サステナブル=我慢」ではないことを証明しています。むしろ、持続可能な仕組みがあるからこそ、この地に息づく静かな自然美や深い文化体験という“贅沢”が守られているのです。まさに、それがラグジュアリーな旅館体験の本質をかたちづくっています。
*記事提供: THE RYOKAN COLLECTION
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